Hiromichi YokochiSukajan Pattern Designer

Aoi-karakusa Takagari-zu — a pattern drawn for Ieyasu AOI
KARAKUSA
葵唐草鷹狩図黒天鵞絨羽織(あおいからくさ たかがりず くろびろうどはおり)

徳川美術館が所蔵する「しかみ像」を題材に、スカジャンの技法で仕立てた一点物です。題材の絵をそのまま背中に置くのではなく、家康公に献上するつもりで新しい柄を描き起こしました。どうやってこの柄に辿り着いたのかを、柄の要素ごとに書いています。

THE WORK作品

黒天鵞絨(くろびろうど)に金の糸。

葵唐草鷹狩図黒天鵞絨羽織

背面の刺繍。葵唐草でできた鷹が雉に襲いかかる図と、金の月、Hinomoto の文字
背面。葵の唐草紋様で鷹の翼を組み、その鷹が雉に襲いかかる瞬間を描いています。上部に金の月と「Hinomoto」の文字。刺繍は Ami さん。
前面の刺繍。左右の胸にしかみ像の顰めた顔を配置
前面。左右の胸に、しかみ像の顰(しか)めた顔。裏地は赤。
項目内容
柄の名前葵唐草鷹狩図(あおいからくさ たかがりず)
アイテム黒の別珍(天鵞絨)のスカジャン/裏地は赤/一点物
※ 作品名は美術品の名づけ方にならって「黒天鵞絨羽織」としています
題材徳川美術館所蔵《徳川家康三方ヶ原戦役画像》、通称「しかみ像」
※ 作品の詳細は徳川美術館の公式ページでご覧いただけます
企画中京テレビ『ムジナバケール』×徳川美術館
担当した範囲柄のデザイン(構想・取材・原画・色指定)
刺繍Ami
展示共同企画展示「現代クリエイターとの遭遇」ほか、巡回展「ムジナバケール展」(名古屋タカシマヤ/渋谷モディ/神戸マルイ)

MOTIF題材

最も有名な家康像の一つ。

徳川家康三方ヶ原戦役画像
(通称 しかみ像)

徳川家康が三方ヶ原(みかたがはら)での武田信玄との合戦に敗れたのち、戒めとして描かせたとも伝わる肖像画です。

ただし近年(2015年)の研究では、戒めとしたというのは昭和に拡まった説で、実際には崇拝対象とするために描かれたのではないかともいわれています。いずれにせよ、その解釈も含めて現存する家康の肖像画としては最も知られている像の一つです。

『ムジナバケール』は、徳川美術館が所蔵する国宝や重要文化財を、現代のクリエイターが新しい作品にリブートする番組です。この像をそのまま背中に置いたスカジャンも、もちろんかっこよくなります。ただ、せっかく現代の柄デザイナーが作るのであれば、献上品として家康公を唸らせるようなものをゴールにしたい。そう考えて、背面はまったく新しい柄にすると決めました。

FRONT前面

何かを考える家康。

家康の顰(しか)めた顔

しかみ像は敗戦の戒めなのか。崇拝のための絵なのか。どちらの説をとるとしても、この像の特徴は「しかみ像」の名にもなった顔の表情の独特さです。

この像を見ていると「いったい家康は何を考えているのだろう?」と、自然と天下人の考えに思いを馳せることになります。前面には、そんな家康の顰めた顔を配置しました。

この問いが、この一着の設計そのものです。前面で問い、背面で答える。背面の鷹狩りは、家康が何を考えていたのかを想像して描いた景色です。

BACK背面

しかみ像が考えていることは何か。

鷹狩り — 家康の思う景色

前面の「何を考えているのだろう」という問いに対して、背面はその答えです。家康が思い描いていた景色を想像して描きました。

家康は「鷹狩り」をこよなく愛したことで知られています。単なる趣味ではなく、国家運営・軍政・健康・人心掌握のすべてを担う戦略行動だったとも言われます。風を読み狩りを行う鷹の姿に、天下統一の戦略の極意を見ていたのかもしれません。

そして「鷹」は、スカジャン3大柄の1つに数えられる重要な柄でもあります。そこで背面には、キジ——家康の好物です——を捕えようとする鷹狩りの鷹をあしらいました。どんな時でも風を読み「狩る側」を極めんとした、家康の思い描いた景色なのではないか。そう考えたからです。

柄のモチーフは、思いつきでは決まりません。本格的に描き始める前に徳川美術館へ取材に行かせていただき、その場でスケッチを始めています。題材を調べ尽くして根拠が立つところまで詰めてから、線を引きます。

DECORATION装飾

徳川家の繁栄、江戸時代を表現。

葵唐草

背面の鷹とキジは、通常のスカジャン柄ではなく葵の唐草紋様で描かれています。推敲を重ねる中で「もっとみごとな柄にできないか」と考え、あらためて「しかみ像」を見返したとき、掛け軸の布が唐草模様(唐花唐草でしょうか)であったことから着想を得ました。

葵(フタバアオイ)

元々は賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ/通称 上賀茂神社)の象徴です。徳川家が上賀茂神社を信仰していたから家紋にされたとも言われます。アフヒは、ヒ(神)にアフ(逢う)。神との再会を誓った柄です。

唐草

終わりなく続くことから繁栄を表す柄で、古代ギリシャから続く、人類史上最も歴史を持つ柄のひとつです。他の草木と掛け合わせても使えます。鉄線と組み合わせれば鉄線唐草、宝相華と組み合わせれば宝相華唐草。ツルが繋がることで、繁栄や長期的な継続を表す吉祥性がさらに加わります。

葵唐草

この二つを掛け合わせた葵唐草は、徳川家の繁栄を願う家康の思いを表しています。人との出会いを大切にされる方に着ていただく一着としても、ぴったりの柄になりました。

LETTERING文字

家康の思い描いた景色。

Hinomoto

ヴィンテージスカジャンの最大の特徴と言えば、文字の形です。当時の職人さんは英字を書く習慣がなかったため、図形として捉えて縫いました。このことからヴィンテージスカジャンでは、今とは違う文字の純然たる「美しさ」が実現されています。

しかし、家康が思い描いた景色に、なんと文字を入れるのか。当時不可能とも思われた天下統一を成し遂げ、約260年続いた時代を作った武将の思い描いた景色。それこそがその時代の「日本」そのものだったといえると思い、Hinomoto(雅語)としました。

当時の文字刺繍については横地広海知についてでも書いています。

STITCH刺繍

糸になったときに決まる。

蒔絵のような雰囲気に

柄についてまとめた資料を用意し、刺繍は Ami さんにお願いしました。仕上がりのイメージとして「蒔絵のような雰囲気になるように」という無茶振りも追加してしまいましたが、いつもながら想像以上の仕上がりにしていただきました。

Ami さんは文字にこだわっていらっしゃる方です。「Hinomoto」の一文字ずつの形も、ぜひご覧ください。

NEXTご依頼

同じ手順でお受けします。

この作り方で、
御社の柄もお描きします

題材を調べ、着る人との接点を探し、現物を見に行き、装飾の一つひとつに意味を持たせる。柄のご依頼では、毎回この作業をしています。

柄のデザインのみ

生産ラインをお持ちのブランド向けに、柄のデータだけをお納めします。スカジャン以外のアイテムにも対応します。

スカジャンOEM・ブランド別注

柄の作成から刺繍データ、量産の手配まで一括で。1着から100着以上まで。

オーダーメイド(一着)

個人のお客様向けに、一着だけのフルオーダーも承っています。165,000円(税込)〜。